「連帯保証人を頼める人がいない。賃貸は借りられないのでは」
結論から書きます。
連帯保証人がいなくても、賃貸住宅は借りられます。家賃債務保証会社を使う契約が、今の実務の中心だからです。
背景には2020年4月1日に施行された民法改正があります。個人が連帯保証人になる契約には「極度額」(責任の上限額)を書面で定めなければ無効というルール(民法465条の2)が入り、個人に連帯保証を頼む契約は貸主側にとっても扱いにくくなりました。国土交通省に登録している家賃債務保証業者は123者(2026年8月13日時点)あります。
この記事では、連帯保証人がいない人が取れる選択肢を整理したうえで、民法の条文と国土交通省の調査データから、連帯保証人・保証会社・極度額の仕組みを解説します。
この記事でわかること
- 連帯保証人がいないときの4つの選択肢と、それぞれの向き不向き
- 「保証人」と「連帯保証人」の条文レベルでの違い
- 2020年民法改正で必須になった「極度額」の意味と、国土交通省が公表した参考データ
- 家賃債務保証会社の仕組み(代位弁済と求償)と、審査で見られること
- 逆に、連帯保証人を頼まれたときに確認すべき条文
連帯保証人がいないときの4つの選択肢
先に全体像です。連帯保証人を用意できない場合、取れる道は大きく4つあります。
| 選択肢 | 仕組み | 向いている人 |
|---|---|---|
| ① 家賃債務保証会社を使う | 借主が保証料を払い、保証会社が連帯保証人の役割を引き受ける | ◎ ほぼ全員。今の賃貸実務の中心 |
| ② 保証人不要の物件を選ぶ | UR賃貸住宅など、制度として保証人を求めない物件 | ○ 対象エリアにURがある人 |
| ③ 法人契約にする | 勤務先が借主になり、個人の保証人を不要にする形が多い | ○ 社宅制度のある会社に勤める人 |
| ④ 貸主に個別に相談する | 保証会社を使わず、貸主の判断で保証人なしにしてもらう | △ 例外的。期待しないほうがよい |
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「保証人」と「連帯保証人」は何が違うのか|民法446条・452条・453条・454条
賃貸で求められるのは、ほぼ例外なく「連帯」保証人です。まず保証人の基本から条文を見ます。
(保証人の責任等)
民法 第446条第1項・第2項(e-Gov法令検索)
第四百四十六条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
ふつうの保証人には、2つの「盾」が法律で与えられています。
(催告の抗弁)
第四百五十二条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。(後略)(検索の抗弁)
民法 第452条・第453条(e-Gov法令検索)
第四百五十三条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
そして「連帯」が付くと、この2つの盾が消えます。
(連帯保証の場合の特則)
民法 第454条(e-Gov法令検索)
第四百五十四条 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
つまり連帯保証人は、借主が1か月滞納した時点で、借主を飛ばして直接請求されうる立場です。親や兄弟に頼みにくいのは当然で、頼まれる側が断るのも当然です。「頼める人がいない」のは珍しいことではありません。
| 項目 | 保証人 | 連帯保証人 |
|---|---|---|
| 契約の方式 | 書面(または電磁的記録)が必要(446条2項・3項) | |
| 催告の抗弁(まず借主に請求して) | ある(452条) | ない(454条) |
| 検索の抗弁(まず借主の財産から) | ある(453条) | ない(454条) |
| 責任の範囲 | 家賃のほか利息・違約金・損害賠償など従たるもの全部(447条1項) | |
| 個人が引き受ける場合の上限 | 極度額を定めないと無効(465条の2) | |
2020年の民法改正で「極度額」が必須になった|民法465条の2
ここが、保証会社が主流になった法律上の背景です。
賃貸の連帯保証は「いつ、いくら発生するかわからない債務」をまとめて保証するので、法律上は「根保証(ねほしょう)」にあたります。
(個人根保証契約の保証人の責任等)
民法 第465条の2(e-Gov法令検索)
第四百六十五条の二 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
ポイントは3つです。①個人が連帯保証人になるなら、責任の上限額(極度額)を決めなければならない。②決めていない保証契約は無効。③極度額は書面(または電磁的記録)で定める必要がある。この規定は2020年4月1日施行の改正民法で追加され、国土交通省の資料は、住宅の賃貸借契約の連帯保証人にも適用されると明記しています。
注意してほしいのは、465条の2が縛るのは「保証人が法人でないもの」だという点です。法人である家賃債務保証会社が保証人になる場合、この極度額のルールは直接には適用されません。個人に頼むと上限額の協議と書面化が必要になる一方、保証会社ならその手間がない。貸主側が保証会社を選ぶ理由の一つです。
極度額はいくらが目安か|国土交通省の参考資料
極度額の金額は法律で決まっていません。当事者の協議で決めます。
そのために国土交通省は2018年3月30日に「極度額に関する参考資料」を公表し、3つの調査結果を示しました。
もっとも直接的なのは、裁判所の判決で連帯保証人の負担として確定した額の調査です。
| 指標 | 連帯保証人の負担総額 ÷ 月額家賃等 |
|---|---|
| 平均値 | 13.2か月分 |
| 中央値 | 12か月分 |
| 最小値 | 2か月分 |
| 最大値 | 33か月分 |
もう一つは、家賃債務保証業者が借主に代わって支払い、回収できずに損害となった額の調査です(登録業者13社・20,886件)。家賃帯ごとに見ると、損害額は家賃とともに上がっていきます。
| 月額家賃の帯 | 件数 | 損害額の中央値 | 損害額の平均値 | 最高額 |
|---|---|---|---|---|
| 4万円未満 | 3,797件 | 11.5万円 | 17.7万円 | 178.4万円 |
| 4万〜8万円未満 | 12,789件 | 19.0万円 | 28.2万円 | 346.0万円 |
| 8万〜12万円未満 | 2,783件 | 35.6万円 | 50.0万円 | 418.6万円 |
| 12万〜16万円未満 | 842件 | 49.9万円 | 71.2万円 | 369.3万円 |
| 16万〜20万円未満 | 327件 | 64.8万円 | 97.3万円 | 478.5万円 |
| 20万〜30万円未満 | 250件 | 85.8万円 | 126.2万円 | 606.8万円 |
| 30万〜40万円未満 | 62件 | 104.5万円 | 156.8万円 | 887.4万円 |
| 40万円以上 | 36件 | 270.0万円 | 437.3万円 | 2,445.3万円 |
家賃債務保証会社の仕組み|借主・貸主・保証会社の三角形
保証会社を使う契約では、借主が保証会社に保証料を払い、保証会社が貸主に対して連帯保証人と同じ役割を引き受けます。滞納が起きると、保証会社が貸主へ立て替え払い(代位弁済)し、その後で借主に請求(求償)します。
保証会社は「肩代わりして終わり」ではありません。④のとおり、立て替えた分は必ず借主に請求されます。保証会社を使えば滞納しても平気、という意味ではまったくありません。
保証会社には国土交通省の登録制度がある
家賃債務保証業には、国土交通省の「家賃債務保証業者登録制度」(平成29年国土交通省告示第898号、2017年10月25日施行)があります。登録は任意で、登録がなくても営業はできますが、一定の要件を満たした業者が国に登録される仕組みです。
登録事業者数は123者(2026年8月13日時点)で、一覧は国土交通省のサイトで公開されています。
保証料は「初回」と「更新時」の2種類
保証料の金額は保証会社と物件によって異なり、法律で決まった相場はありません。確認すべきは次の3点です。
- 初回保証料……契約時に払う。「月額賃料等の◯%」または定額で示されることが多い
- 更新保証料……1年ごと、または契約更新ごとに払う。初回とは別に発生する
- 保証の範囲……家賃だけか、原状回復費用や残置物撤去費まで含むか。国土交通省の調査では、保証業者が立て替えた費目として家賃・共益費のほか更新料・残置物撤去費・修繕費・違約金が挙げられている
保証会社の審査で見られること、そして「緊急連絡先」
連帯保証人が不要になる代わりに、保証会社の審査が入ります。審査基準は各社が公開していないので断定はできませんが、申込書で求められる項目から、見られている要素は推測できます。
| 申込時に求められるもの | 何を見るためか |
|---|---|
| 勤務先・雇用形態・年収 | 家賃を継続して払えるか |
| 本人確認書類・収入証明 | 申告内容が事実か |
| 緊急連絡先(親族など) | 本人と連絡が取れなくなったときの連絡先 |
| 過去の賃貸契約や支払い状況 | 同じ保証会社や信用情報での履歴 |
「緊急連絡先」は連帯保証人ではありません。緊急連絡先は支払い義務を負わず、連絡が取れないときの連絡先にすぎません。親に連帯保証人を頼めない人でも、緊急連絡先なら頼みやすいはずです。逆に、緊急連絡先のつもりで連帯保証人の欄に署名しないよう、書類の名称は必ず確認してください。
滞納が起きたらどうなるか|1,000件の追跡データ
国土交通省の同じ資料には、賃貸住宅管理会社120社(管理戸数約59万戸)への調査で、家賃滞納が1,000件起きたと仮定した場合の行方が示されています。
滞納の9割以上は1か月以内に全額回収されています。一方で、訴訟や強制執行まで進んだケースでは未納家賃が平均7.2〜9.7か月分に達し、強制執行の経費は平均50.7万円です。先ほどの「連帯保証人の負担は平均13.2か月分」という判決データと、ほぼ整合する数字です。
「保証会社を使ったうえで、さらに連帯保証人も」と言われたら
物件によっては、保証会社の利用に加えて個人の連帯保証人を求められることがあります。この場合に確認すべき条文が2つあります。
①極度額が書かれているか(465条の2)
先に見たとおり、個人の連帯保証には極度額の定めが必須です。契約書の連帯保証人欄に極度額の記載がなければ、その連帯保証の定めは効力を生じません。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)」には極度額を記載する欄が設けられています。
②保証会社の「求償権」を個人が保証する形になっていないか(465条の5)
保証会社が借主に代わって払った分(求償権)について、個人の連帯保証人がさらに保証する、という構造の契約があります。ここには民法465条の5が関係します。
(保証人が法人である根保証契約の求償権)
民法 第465条の5第1項(e-Gov法令検索)
第四百六十五条の五 保証人が法人である根保証契約において、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。
読み替えると、保証会社(法人)の保証契約に極度額の定めがないとき、その求償権を個人が保証する契約は無効です。「保証会社にも入り、親も連帯保証人に」という契約書を渡されたら、どの債務を誰が保証する構造なのか、極度額がどこに書かれているかを確認してください。
③借主や保証人が亡くなると、保証の範囲は確定する(465条の4)
(個人根保証契約の元本の確定事由)
民法 第465条の4第1項第3号(e-Gov法令検索)
第四百六十五条の四 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。(中略)
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
連帯保証人が亡くなった後に発生した家賃までは、その相続人には引き継がれません。逆に、借主が亡くなった時点で、それまでの未払い分で保証の範囲が確定します。連帯保証人を頼む側・頼まれる側の双方が知っておくべき条文です。
| 確認項目 | 見る場所 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 保証会社名と登録の有無 | 申込書・重要事項説明書、国土交通省の登録業者一覧 | 平成29年国交省告示第898号 |
| 初回保証料・更新保証料・保証の範囲 | 保証委託契約書 | —(契約内容による) |
| 連帯保証人欄に極度額があるか | 賃貸借契約書の連帯保証人欄 | 民法465条の2 |
| 保証会社の求償権を個人が保証する構造か | 保証委託契約書・賃貸借契約書 | 民法465条の5 |
| 「緊急連絡先」か「連帯保証人」か | 署名する書類のタイトル | 民法446条2項(保証は書面で成立) |
連帯保証人がいない人の、物件の探し方
保証会社を使う前提なら、探し方はふつうの部屋探しと変わりません。ポータルサイトの物件情報に「保証会社利用必須」「保証人不要」と書かれていれば、それがそのまま答えです。
- 物件情報の「保証会社」「保証人」の欄を先に見る。「保証人不要(保証会社利用)」が今の標準的な表記
- 問い合わせの時点で「連帯保証人は用意できないが、保証会社利用で申し込めるか」と一言添える
- 緊急連絡先になってくれる人だけは先に決めておく(支払い義務はないので頼みやすい)
- 初回保証料は初期費用に上乗せされる。総額で比較する
この物件は、連帯保証人なし・家賃債務保証会社の利用で申し込めますか。保証会社名と、初回保証料・更新保証料の金額も教えてください。
タダスムは、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトで見つけた物件のURLをLINEで送るだけで進められるお部屋探しサービスです。仲介手数料は0円、または最大50%。対応エリアは関東(一部地域に限る)と大阪市内(一部地域に限る)です。
連帯保証人がいないことも、最初のやり取りで伝えれば、保証会社利用で申し込める物件かどうかを含めて確認できます。
よくある質問
連帯保証人がいなくても賃貸は借りられますか?
借りられます。家賃債務保証会社を利用する契約が現在の賃貸実務の中心で、借主が保証料を払うことで保証会社が連帯保証人の役割を引き受けます。国土交通省の家賃債務保証業者登録制度には123者が登録されています(2026年8月13日時点)。ほかに、UR賃貸住宅のように制度として保証人を求めない物件や、勤務先が借主になる法人契約という選択肢もあります。
保証人と連帯保証人は何が違いますか?
通常の保証人には、まず借主に請求するよう求める「催告の抗弁」(民法452条)と、まず借主の財産から取り立てるよう求める「検索の抗弁」(民法453条)があります。連帯保証人は民法454条によりこの2つの権利を持たないため、借主が滞納すると借主と同じ立場で最初から請求を受けます。賃貸で求められるのは、ほぼ例外なく連帯保証人です。
極度額とは何ですか?書かれていないとどうなりますか?
極度額は、個人の連帯保証人が負う責任の上限額です。2020年4月1日施行の改正民法465条の2により、個人が根保証(賃貸の連帯保証を含む)を引き受ける契約は極度額を定めなければ効力を生じません。極度額の定めは書面または電磁的記録で行う必要があります。国土交通省の参考資料では、裁判で連帯保証人の負担として確定した額は平均で家賃の13.2か月分、中央値は12か月分でした。
緊急連絡先は連帯保証人と同じですか?
違います。緊急連絡先は、借主本人と連絡が取れなくなったときの連絡先であり、家賃の支払い義務を負いません。連帯保証人は民法446条により書面で保証契約を結んだ人で、借主が払わないときに支払う責任を負います。署名する書類が「緊急連絡先」なのか「連帯保証人」なのかは、書類のタイトルで必ず確認してください。
保証会社を使えば、家賃を滞納しても大丈夫ですか?
大丈夫ではありません。保証会社は滞納分を貸主に立て替え払い(代位弁済)した後、その全額を借主に請求(求償)します。国土交通省の調査では、家賃滞納1,000件のうち1か月経過時点で未回収なのは57.1件で、訴訟や強制執行に至ったケースでは未納家賃が平均7.2〜9.7か月分に達し、強制執行の経費は平均50.7万円でした。
保証会社に加えて連帯保証人も求められました。断れますか?
求めること自体は貸主の自由ですが、確認すべき点が2つあります。第一に、個人の連帯保証には民法465条の2の極度額の記載が必須で、なければその定めは無効です。第二に、保証会社(法人)の保証契約に極度額の定めがない場合、その求償権を個人が保証する契約は民法465条の5により効力を生じません。どの債務を誰が保証する構造かを契約書で確認し、納得できなければ保証会社のみで申し込める別の物件を探すのが現実的です。
まとめ
- 連帯保証人がいなくても、家賃債務保証会社を使えば賃貸は借りられる。これが今の実務の中心
- 連帯保証人は催告・検索の抗弁を持たない(民法454条)。滞納が起きれば借主と同じ立場で請求される
- 2020年4月施行の改正民法で、個人の連帯保証には極度額の定めが必須になった(465条の2)。なければ無効
- 国土交通省の調査では、判決で確定した連帯保証人の負担は平均で家賃13.2か月分
- 保証会社は立て替えた後に必ず借主へ請求する。滞納しても平気という意味ではない
- 保証会社には国土交通省の登録制度がある(123者・2026年8月13日時点)。契約前に一覧で確認できる
- 緊急連絡先は支払い義務のない連絡先。連帯保証人とは別物
「連帯保証人がいない」ことは、部屋探しの障害ではなくなっています。
確認すべきは、保証会社の名前と保証料、そして契約書のどこに誰の責任が書かれているかです。
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