「2年契約と聞いていたのに、2年で出ていってくださいと言われた」
結論から書きます。
定期借家契約は、期間が満了したら必ず終わります。更新という制度がありません。
根拠は借地借家法第38条です。普通の賃貸借(普通借家)では、貸主が更新を拒むには「正当の事由」が必要で、これがないと契約は自動的に更新されます。定期借家はこの仕組みを外した契約で、貸主に理由は要りません。
この記事では、定期借家契約のデメリットを条文から一つずつ確認し、借りる側が持っている法律上の防御ラインまで解説します。
この記事でわかること
- 定期借家契約と普通借家契約の、条文レベルでの違い
- 定期借家の5つのデメリットと、それぞれの根拠条文
- 定期借家が「無効」になり普通借家として扱われる3つのケース
- 床面積200平方メートル未満の住宅で使える、法律上の中途解約権
- 契約前に定期借家かどうかを見分ける方法
定期借家契約とは|借地借家法38条が定める「更新のない賃貸借」
まず条文を見ます。
(定期建物賃貸借)
借地借家法 第38条第1項(e-Gov法令検索)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
「第三十条の規定にかかわらず」という部分が要点です。借地借家法30条はこう定めています。
(強行規定)
借地借家法 第30条(e-Gov法令検索)
第三十条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
通常、借りる人に不利な特約は無効になります。
定期借家は、その保護を法律自身が例外的に外した契約類型です。だからこそ、後で見るように厳格な手続きが要求されています。
普通借家は「正当の事由」がなければ終わらない
比較のため、普通借家の条文も見ておきます。
(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知(中略)をしなかつたときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
借地借家法 第26条第1項・第28条(e-Gov法令検索)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(中略)が建物の使用を必要とする事情のほか、(中略)正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
| 項目 | 普通借家 | 定期借家 |
|---|---|---|
| 期間満了時 | 更新される(26条1項) | 終了する(38条1項) |
| 貸主が終わらせる条件 | 正当の事由が必要(28条) | 条件なし |
| 契約の方式 | 口頭でも成立する | 書面または電磁的記録が必須(38条1項・2項) |
| 事前説明 | 不要 | 契約とは別の書面で必要(38条3項) |
| 1年未満の契約 | 期間の定めがないものとみなす(29条1項) | そのまま有効(38条1項後段) |
| 家賃の減額請求 | できる(32条) | 特約があればできない(38条9項) |
| 住み続けたいとき | 更新を待てばよい | 貸主の同意による再契約が必要 |
定期借家契約の5つのデメリット
デメリット1|住み続けたくても、期間が来たら出ていくことになる
最大のデメリットです。
気に入って住んでいても、職場が近くても、期間満了で契約は終わります。貸主に理由の説明義務はありません。
住み続けるには「再契約」しかありませんが、再契約に応じるかどうかは貸主の自由です。更新のように法律が後押ししてくれる仕組みではありません。再契約時に家賃を上げられても、それを拒む法律上の根拠は基本的にありません。
お子さんの学区、通勤経路、在宅勤務の環境など、「動かせない事情」がある人には向きません。期間満了の時期と、そのときの自分の生活を先に想像してください。
デメリット2|途中で解約できるとは限らない
ここは誤解が多いところです。
定期借家では期間が確定している分、借りる側からの中途解約も原則としてできません。契約書に中途解約の特約がなければ、残りの期間の家賃を求められることがあります。
例外として、法律が中途解約権を与えている場合があります。
7 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(中略)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となつたときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによつて終了する。
8 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
借地借家法 第38条第7項・第8項(e-Gov法令検索)
条件が3つ重なっている点に注意してください。
デメリット3|家賃の減額を請求できないことがある
普通の賃貸借では、相場が下がったときに借主から家賃の減額を請求できます(借地借家法32条)。
定期借家では、この権利が特約で外されることがあります。
9 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
借地借家法 第38条第9項(e-Gov法令検索)
契約書に「賃料は◯年目から△△円に改定する」といった条項があると、32条の増減額請求権そのものが適用されなくなります。途中で家賃が上がる設計になっていないか、契約書の賃料改定条項を必ず読んでください。
デメリット4|1年未満の短い契約も有効になる
普通借家では、1年未満の期間を定めても「期間の定めがない契約」として扱われます。
(建物賃貸借の期間)
借地借家法 第29条第1項(e-Gov法令検索)
第二十九条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
ところが38条1項の後段は「この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない」と書いています。
つまり定期借家なら、6か月契約も3か月契約もそのまま有効です。短期の住まいを探している人には利点ですが、長く住むつもりの人には落とし穴になります。
デメリット5|再契約のたびに費用と手間がかかることがある
更新は「同じ契約が続く」ことですが、再契約はいったん終わった契約を、新しく結び直すことです。法律上まったく別の行為です。
そのため、契約時と同じ手続きが最初からやり直しになります。再契約にあたって何が発生するかは契約内容によりますが、「更新料はかかりません」という説明が、そのまま「費用ゼロで住み続けられる」という意味とは限りません。再契約時にかかる費用の有無を、契約前に必ず確認してください。
| デメリット | 根拠条文 | 影響が大きい人 |
|---|---|---|
| 期間満了で必ず終了する | 借地借家法38条1項 | 長く住みたい人、学区を動かせない人 |
| 中途解約が原則できない | 38条7項の裏返し | 転勤の可能性がある人(ただし例外あり) |
| 家賃の減額請求ができないことがある | 38条9項 | 長期の契約を結ぶ人 |
| 1年未満の契約も有効 | 38条1項後段(29条1項の不適用) | 期間の意味を確認していない人 |
| 再契約は貸主の任意 | 38条1項(更新制度がない) | 住み続ける前提で計画している人 |
定期借家が「無効」になり、普通借家として扱われる場合
ここが借りる側にとって最も重要な防御ラインです。
定期借家として成立させるには、法律が定める手続きを満たす必要があります。手続きが欠けていれば、更新がないという定めだけが無効になります。
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかつたときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
借地借家法 第38条第3項・第5項(e-Gov法令検索)
38条3項が求めているのは「契約書とは別に、あらかじめ交付して説明する書面」です。契約書の中に「本契約は定期借家である」と書いてあるだけでは、この要件を満たしません。この書面が交付されていたかどうかは、定期借家の効力をめぐって実務上もっとも争われるポイントです。
| 要件 | 条文 | 満たされなかった場合 |
|---|---|---|
| 書面(または電磁的記録)で契約する | 38条1項・2項 | 更新がないとする定めができない |
| 契約に先立ち、別の書面を交付する | 38条3項 | 更新がない定めが無効(38条5項) |
| 更新がなく期間満了で終了すると説明する | 38条3項 | 更新がない定めが無効(38条5項) |
| 電磁的方法で提供する場合は借主の承諾を得る | 38条4項 | 書面を交付したとみなされない |
契約のときに「定期建物賃貸借に関する説明書」といった書面を、契約書とは別に受け取ったかを思い出してください。受け取っていなければ、その定期借家契約は成立していない可能性があります。書面は必ず保管してください。
1年以上の契約なら、終了の通知がないと出ていく必要はない
もう1つ、借りる側を守る規定があります。
6 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(中略)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
借地借家法 第38条第6項(e-Gov法令検索)
貸主が通知を忘れた場合、期間が満了してもその終了を借主に主張できません。ただし遅れて通知したときは、その日から6か月が経てば終了を主張できるようになります。
つまり、通知が遅れた分だけ退去の時期も後ろにずれる、という構造です。
それでも定期借家に意味がある場面
デメリットばかり書きましたが、定期借家という制度自体は合理的なものです。
普通借家では28条の「正当の事由」が厳しく、いったん貸すと戻せなくなるリスクがあるため、貸すこと自体をためらう所有者がいます。定期借家は、その物件を市場に出すための仕組みです。
- 転勤中の持ち家……所有者が戻る予定があるため、期間を区切らないと貸せない
- 建て替えや売却の予定がある物件……予定の時期まで空室にせずに済む
- 短期の住まいを探している人……1年未満の契約が有効なので、期間を合わせやすい
- 期間が決まっている生活……単身赴任、留学、工事期間中の仮住まいなど
契約前に定期借家かどうかを見分ける方法
気づかないまま契約することは、実は起こりにくくなっています。
重要事項説明で必ず説明されるからです。
九 (中略)建物の賃貸借で同法第三十八条第一項(中略)の規定の適用を受けるものをしようとするときは、その旨
宅地建物取引業法施行規則 第16条の4の3第9号(e-Gov法令検索)
この9号は、建物の貸借の重要事項説明で説明が義務づけられている項目の1つです。定期借家なら、重要事項説明書のどこかに必ずその旨が書かれています。
| 確認する場所 | 見るポイント |
|---|---|
| 物件情報(ポータルサイト) | 「契約期間」欄に「定期借家」「定期借家契約」の表記がないか |
| 重要事項説明書 | 施行規則16条の4の3第9号に対応する記載欄 |
| 契約前に渡される別紙 | 「定期建物賃貸借に関する説明書」があるか(38条3項の書面) |
| 契約書のタイトル | 「定期建物賃貸借契約書」となっていないか |
| 契約書の更新条項 | 更新に関する条項が無い、または「更新がない」と書かれていないか |
内見や問い合わせの段階で聞いておく
重要事項説明の時点で気づいても、そこまでに時間と手間を使っています。
問い合わせのときに一言聞いておけば済みます。
この物件は普通借家契約でしょうか、それとも定期借家契約でしょうか。定期借家の場合は、契約期間と、再契約の可否についても教えてください。
よくある質問
定期借家契約の最大のデメリットは何ですか?
期間が満了したら契約が必ず終了し、住み続けられないことです。借地借家法第38条第1項により、定期借家では契約の更新がないと定めることができます。普通借家であれば、貸主が更新を拒むには同法第28条の「正当の事由」が必要ですが、定期借家ではこの要件がかかりません。住み続けるには貸主の同意による再契約が必要で、応じるかどうかは貸主の自由です。
定期借家は途中で解約できますか?
原則としてできませんが、法律上の例外があります。借地借家法第38条第7項により、居住のための建物で床面積が200平方メートル未満であり、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情で生活の本拠として使えなくなったときは、解約を申し入れることができます。この場合、申入れの日から1か月の経過で契約は終了します。同条第8項により、この権利を借主に不利に制限する特約は無効です。3つの条件を満たさない場合は、契約書の中途解約特約の有無によります。
定期借家と説明されなかった場合はどうなりますか?
更新がないという定めが無効になります。借地借家法第38条第3項は、貸主があらかじめ借主に対し、契約の更新がなく期間の満了により終了することを記載した書面を交付して説明しなければならないと定めています。同条第5項により、この説明をしなかったときは更新がないとする定めが無効となり、更新のある普通借家として扱われます。この書面は契約書とは別に交付される必要があります。
定期借家で家賃の減額を請求できますか?
借賃の改定に関する特約があるときはできません。借地借家法第38条第9項は、定期借家で借賃の改定に係る特約がある場合には、借賃増減請求権を定めた同法第32条を適用しないと規定しています。契約書に賃料の改定条項がある場合は、相場が下がっても減額を請求できないことになります。契約前に賃料改定条項を確認してください。
貸主から終了の通知が来なかったらどうなりますか?
契約期間が1年以上の場合、貸主は終了を借主に対抗できません。借地借家法第38条第6項により、貸主は期間の満了の1年前から6か月前までの間に終了する旨を通知しなければならず、これを怠ると期間が満了しても終了を主張できません。ただし通知期間が過ぎた後に通知した場合は、その通知の日から6か月を経過すれば主張できるようになります。この規定は契約期間が1年以上の場合に限られます。
その物件が定期借家かどうかは、契約前にわかりますか?
わかります。宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3第9号により、借地借家法第38条第1項の適用を受ける賃貸借であるときは、その旨が重要事項説明で説明されます。またポータルサイトの契約期間欄、契約書のタイトル、契約前に交付される定期建物賃貸借に関する説明書でも確認できます。問い合わせの段階で普通借家か定期借家かを聞いておくのが確実です。
まとめ
- 定期借家は期間満了で必ず終了する契約(借地借家法38条1項)
- 普通借家と違い、貸主に「正当の事由」は要らない(28条が適用されない)
- 中途解約は原則できないが、居住用・200平方メートル未満・やむを得ない事情なら法律上の解約権がある(38条7項)
- 賃料改定の特約があると、家賃の減額請求ができない(38条9項)
- 契約書とは別の事前説明書面がなければ、更新がない定めは無効(38条3項・5項)
- 期間1年以上なら、満了の1年前から6か月前までの通知がないと終了を主張できない(38条6項)
- 定期借家かどうかは重要事項説明で必ず説明される(宅建業法施行規則16条の4の3第9号)
定期借家そのものが悪い契約というわけではありません。
問題になるのは、普通借家のつもりで定期借家を契約してしまうことです。契約期間が終わる時期に自分が引っ越せる状態かどうかだけ、先に確かめてください。
タダスムは、ポータルサイトで見つけた物件のURLをLINEで送るだけで進められるお部屋探しサービスです。仲介手数料は0円、または最大50%。対応エリアは関東(一部地域に限る)と大阪市内(一部地域に限る)です。
気になる物件が定期借家かどうかも含めて、申し込む前に確認できます。
\ とりあえず無料で相談 /


