「今決めないと他の人に取られますよ」
「せっかく案内したんだから、今日申し込んでください」
不動産屋でこう言われて、断れずに申し込んでしまった。
そんな経験がある方に、まず知っておいてほしいことがあります。
しつこい勧誘は、宅地建物取引業法とその施行規則で明確に禁止されています。「断ったのに勧誘を続ける」「考える時間を与えない」は、どちらも条文に書かれた違反行為です。あなたが我慢する話ではありません。
この記事では、何が違反にあたるのかを条文で確認したうえで、その場での断り方と、そもそも営業を受けずに部屋を決める方法を解説します。
この記事でわかること
- 法令で禁止されている勧誘行為の一覧(条文つき)
- 申込金を返してもらえないときの根拠
- 賃貸にクーリングオフはないという重要な注意点
- その場で断るときの具体的な言い方
- そもそも営業を受けない部屋探しの手順
しつこい勧誘は法令違反です
まず宅地建物取引業法の本体に、こう書かれています。
第四十七条の二 宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。
2 宅地建物取引業者等は、宅地建物取引業に係る契約を締結させ、又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない。
宅地建物取引業法 第47条の2(e-Gov法令検索)
さらに同条第3項を受けて、施行規則にもっと具体的な禁止行為が並んでいます。ここが実務では重要です。
| 号 | 禁止されている行為 | よくある実例 |
|---|---|---|
| イ | 将来の環境や交通の利便について、誤解させる断定的判断を提供すること | 「ここは数年で必ず値上がりします」 |
| ロ | 正当な理由なく、契約するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと | 「今日中に決めてもらわないと困ります」 |
| ハ | 勧誘に先立って、会社名・担当者名・勧誘目的を告げずに勧誘すること | アンケートを装った電話 |
| ニ | 契約しない意思(勧誘を受けたくない意思を含む)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続すること | 断ったのに電話やLINEが続く |
| ホ | 迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問すること | 深夜や早朝の着信 |
| ヘ | 深夜または長時間の勧誘その他、私生活や業務の平穏を害する方法で困惑させること | 店舗で何時間も帰してもらえない |
特に注目してほしいのが「ロ」と「ニ」です。
「考える時間をください」と言う権利は、法令が裏づけています。そして一度断った相手に勧誘を続けることも、明確な違反です。
申込金を返してくれないのも違反です
申し込みを取り消したいと伝えたら、「預かったお金は返せない」と言われた。
これも同じ条文に、はっきり書かれています。
二 宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
宅地建物取引業法施行規則 第16条の11 第2号(e-Gov法令検索)
申し込みを撤回するときに預り金の返還を拒むことは禁止行為です。「手続きを進めてしまったから」という理由も、返還を拒む正当な根拠にはなりません。
ただし、契約が成立したあとに支払った金銭は話が別です。申し込みの段階と契約後では扱いが変わるので、その線引きは押さえておいてください。
重要:賃貸にクーリングオフはありません
ここが一番の注意点です。
「押し切られて契約しても、あとでクーリングオフすればいい」と考えている方がいますが、賃貸にクーリングオフの制度はありません。
宅地建物取引業法のクーリングオフ規定を読むと、対象が限定されています。
(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
宅地建物取引業法 第37条の2(e-Gov法令検索)
第三十七条の二 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所…以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除を行うことができる。
書かれているのは「自ら売主となる宅地又は建物の売買契約」だけです。賃貸借は対象に入っていません。
| 項目 | 売買(宅建業者が売主) | 賃貸 |
|---|---|---|
| クーリングオフ | あり(8日間) | なし |
| 根拠 | 宅建業法37条の2 | — |
| 申込段階の撤回 | できる | できる(契約成立前) |
| 契約後の解除 | 条件つきで可 | 原則できない(違約金が発生することも) |
つまり「その場で契約しない」ことが唯一の防御です。契約してしまえば、あとから取り消す手段は基本的にありません。押し切られそうになったら、必ず持ち帰ってください。
その場で断るときの言い方
断るのが苦手な方向けに、角を立てずに時間を確保できる言い方をまとめました。理由を細かく説明する必要はありません。
| 場面 | 言い方 | 補足 |
|---|---|---|
| 今日中に決めろと言われた | 「一度持ち帰って検討します」 | 判断する時間を拒むのは違反(規則イ〜ヘのロ) |
| 理由を聞かれた | 「家族と相談してから決めます」 | 詳しい説明は不要です |
| 他に取られると言われた | 「そのときはご縁がなかったということで」 | 実際に埋まることもありますが、焦る必要はありません |
| 連絡がしつこい | 「今回は見送ります。今後のご連絡は不要です」 | この一言で、以後の勧誘継続は違反になります |
| 帰らせてもらえない | 「今日は帰ります」と告げて席を立つ | 長時間の勧誘で困惑させるのは違反です |
それでも解決しないとき
宅地建物取引業者は、都道府県知事または国土交通大臣の免許を受けて営業しています。免許を出している行政庁に相談できます。会社の免許番号は、店舗の掲示や公式サイト、重要事項説明書で確認できます。
- やり取りの日時と内容を記録しておく(メール・LINEはそのまま残す)
- 会社名と免許番号を控える
- 免許を出している都道府県の宅地建物取引業担当課、または国民生活センター・消費生活センターに相談する
そもそも営業されない部屋探しの方法
断り方を覚えるより、営業を受ける場面を作らないほうが確実です。ポイントは3つあります。
1 物件を自分で決めてから問い合わせる
営業を受けるのは、こちらが決めていないときです。「何かいい物件ありますか」と聞けば、提案が始まります。
SUUMOやHOME’Sで自分で候補を絞ってから問い合わせれば、提案を受ける場面自体が発生しません。
2 来店しない
店舗の中は相手の場です。座ってしまうと帰りにくくなります。
オンライン内見とIT重説(ITを活用した重要事項説明)に対応している会社なら、入居まで一度も来店せずに進められます。
3 文字でやり取りする
電話や対面はその場で答えを求められます。LINEやメールなら、自分のタイミングで返事ができます。やり取りが記録として残るので、言った言わないのトラブルも防げます。
| 探し方 | 営業の受けやすさ | 向いている人 |
|---|---|---|
| 店舗に行く | 受けやすい | 条件が固まっておらず、提案してほしい人 |
| 電話で問い合わせる | やや受けやすい | 急いでいる人 |
| 自社サイトから問い合わせる | ふつう | 掲載物件の中から選びたい人 |
| 物件を決めてURLを送る | 受けにくい | 住みたい部屋が決まっている人 |
よくある質問
不動産屋のしつこい営業は違法ですか?
禁止されています。宅地建物取引業法第47条の2は、契約を締結させるために相手方を威迫することを禁じています。さらに施行規則第16条の11第1号では、契約しない意思を表示した相手に勧誘を継続すること、正当な理由なく判断に必要な時間を与えることを拒むこと、迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をすることなどが具体的に禁止されています。
賃貸契約にクーリングオフはありますか?
ありません。宅地建物取引業法第37条の2のクーリングオフ規定は「宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約」が対象で、賃貸借は含まれていません。契約が成立したあとに一方的に取り消すことは原則できず、違約金が発生することもあります。その場で契約しないことが唯一の防御です。
申し込みをキャンセルしたら預けたお金は返ってきますか?
契約成立前の申し込み段階であれば返還されます。宅地建物取引業法施行規則第16条の11第2号は、申込みの撤回に際して既に受領した預り金の返還を拒むことを禁止行為として定めています。ただし契約成立後に支払った金銭は扱いが異なります。
「今日決めないと他の人に取られる」は本当ですか?
実際に他の方の申し込みが入ることはあります。ただし、それを理由に判断する時間を与えないことは、正当な理由がなければ施行規則第16条の11第1号ロに該当します。焦って契約すると取り消せないため、迷ったときは持ち帰ってください。
断ったあとも連絡が来ます。どうすればいいですか?
「今後のご連絡は不要です」と明確に伝えてください。この意思を表示したあとも勧誘が続く場合は、施行規則第16条の11第1号ニの禁止行為にあたります。やり取りの日時と内容を記録し、会社名と免許番号を控えたうえで、免許を出している都道府県の宅地建物取引業担当課や消費生活センターに相談できます。
営業されずに部屋を探す方法はありますか?
あります。SUUMO・HOME’S・at homeなどのポータルサイトで自分で物件を決めてから問い合わせれば、提案を受ける場面が発生しません。オンライン内見とIT重説に対応している会社やサービスを選べば、来店せずに契約まで進められます。連絡手段をLINEやメールにすれば、自分のタイミングで返事ができます。
まとめ
- しつこい勧誘は宅建業法47条の2と施行規則16条の11で禁止されている
- 「判断する時間を与えない」「断った相手に勧誘を続ける」は条文に明記された違反
- 申し込み撤回時に預り金の返還を拒むのも違反
- 賃貸にクーリングオフはない。契約したら戻れない
- だからその場で契約しない。「持ち帰って検討します」で十分
- いちばん確実なのは自分で物件を決めてから問い合わせること
断るのが苦手でも、部屋探しはできます。営業を受ける場面を作らなければいいだけです。
\ とりあえず無料で相談 /


