賃貸の申し込みは同時に何件までOK?二重申込のリスクと正しい撤回のやり方

「いいなと思う部屋が2つあって迷う。両方に申し込んでもいいの?」

結論から書きます。
賃貸の申し込みを同時に何件してもよいか、件数を制限する法律はありません。ただし、実務上は気をつけるべき点がいくつかあり、知らずに進めるとトラブルになりやすい場面もあります。

宅地建物取引業法とその施行規則を確認しましたが、「申込みは1件まで」「同時に◯件まで」という数の制限を定めた条文は存在しません。一方で、申込みを撤回するときに預り金の返還を拒む行為は、施行規則で明確に禁止されています。

この記事では、条文を引きながら「何件まで申し込んでよいか」の法律上の答えと、複数申込みで実際に起きるトラブル、一つに絞るときの正しい進め方を解説します。

気に入った部屋がなかなか見つからないと、せっかく見つけた物件を逃したくない気持ちから、心当たりのある会社すべてに連絡したくなるものです。それ自体は自然な行動ですが、進め方を間違えると、審査に関わった会社や、まだ検討中の会社との間で余計なトラブルを招くことがあります。

この記事でわかること

  • 賃貸の申し込みを同時に何件してよいか、法律上の答え
  • 複数の会社・物件に申し込む「二重申込」で実際に起きるトラブル
  • 一つに絞るときの正しい撤回のしかた
  • 預り金の返還を拒まれたときの法的な根拠
  • 不動産会社に迷惑をかけずに進めるためのマナー

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目次

申込みの件数を制限する法律はない

賃貸のルールを定めている主な法律は、宅地建物取引業法とその施行規則です。この中には、重要事項説明や仲介手数料の上限、勧誘のしかたについての規定はありますが、「入居希望者が同時に申し込める件数」を制限する条文はありません。

項目法律の規定
重要事項説明を行う義務あり(宅建業法35条)
仲介手数料の上限あり(宅建業法46条・報酬告示)
しつこい勧誘の禁止あり(施行規則16条の11第1号)
申込み撤回時の預り金返還拒否の禁止あり(施行規則16条の11第2号)
同時に申し込める件数の上限規定なし
出典:宅地建物取引業法・同施行規則(e-Gov法令検索)をもとに作成
宅建業法・同施行規則がカバーする範囲 法律で定めがある ・重要事項説明の実施(35条) ・仲介手数料の上限(46条) ・しつこい勧誘の禁止  (施行規則16条の11第1号) ・預り金返還拒否の禁止  (施行規則16条の11第2号) 法律に定めがない 同時に申し込める 件数の上限 (=違法ではない)

「複数の会社に同時に申し込むのはマナー違反」という声もありますが、それは法律ではなく商慣習の話です。違法かどうかと、実務上どう扱われるかは分けて考える必要があります。

そもそも、なぜ複数の会社に同時相談できるのか

不動産の売買では「専任媒介契約」という仕組みがあり、依頼者は1社にしか売却を任せられません。これに対して、宅地建物取引業法の条文を確認すると、この制度の対象は限定されていることが分かります。

(媒介契約)
第三十四条の二 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。

宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov法令検索)

条文にあるとおり、専任媒介契約の対象は「売買又は交換」で、賃貸(貸借)はそもそも対象に入っていません。入居希望者を1社に縛る法律上の仕組み自体が存在しないため、複数の会社に同時に物件を相談すること自体、制度としてもともと想定されているわけです。

この仕組みの詳細はこちら:SUUMOで見つけた物件は他の不動産会社でも契約できる?

勧誘に関する規制の詳細はこちら:不動産屋の営業がしつこい・断れないときは?宅建業法で禁止されている行為と、営業されない部屋探しの方法


「同時に何件」には2つのパターンがある

ひとくちに「複数申込み」といっても、実は状況によって注意点が変わります。話を進める前に、この2つを分けて考えてください。

パターン内容この記事での位置づけ
A. 別々の物件に、別々の会社で申し込む「この部屋もいいし、あの部屋も捨てがたい」という比較検討この記事のメインテーマ
B. 同じ物件に、複数の客付業者から申し込む1つの部屋を扱っている会社が複数あり、どこ経由で申し込むか迷うケース手数料を抑える手段。別記事で詳しく解説
Bのケースは、そもそも「同じ部屋を取り合っている」わけではないため、Aとはリスクの性質が異なります

Bのように、同じ部屋に対して複数の客付業者から重ねて申込みを入れるのは避けてください。元付業者から見ると「同じ部屋に矛盾する申込みが複数来ている」状態になり、混乱の元になります。会社を比較したいときは、申し込む前に手数料や対応を確認してから、1社に絞って申し込むのが安全です。


それでも「複数申込」がやりづらいと言われる理由

法律で禁止されていなくても、複数の会社に同時に申し込むと実務上いくつかの問題が起きます。審査は不動産会社の中だけで完結せず、オーナーや保証会社にも情報が伝わるためです。

段階誰が動くか複数同時申込みの影響
①申込み不動産会社物件の募集が「申込あり」の扱いになり、他の希望者への案内が止まる
②入居審査保証会社・オーナー審査の手続きが同時並行で進む。両方通ると、一方を断る必要が生じる
③重要事項説明宅地建物取引士この段階まで進めるのは通常1件のみが前提
④契約不動産会社・オーナー契約後は「撤回」ではなく「解除」の扱いに変わる
段階が進むほど、関係者が増え、取り消しの影響も大きくなります
①申込み ②入居審査 ③重要事項説明 ④契約 この区間は原則ペナルティなく撤回できる 解除扱い 意思表示 契約書に署名・捺印

つまり、複数申込みそのものは違法ではありませんが、審査が同時に進んだ結果、双方に通ってしまう可能性がある点が実務上のリスクです。片方を断る必要が生じ、対応を後回しにするほど関係者への影響が大きくなります。

もう一つ知っておきたいのが、募集の止まり方です。多くの物件は「申込みが入った時点」で、他の希望者への案内をいったん止めます。これは早い者勝ちのルールというより、同じ部屋を複数の入居希望者に二重で勧めることを避けるための運用です。だからこそ、申込み後に撤回するなら、募集を止めさせている期間を無駄に長引かせないことが重要になります。


二重で通ってしまったら、一つに絞る正しい手順

結論、契約書に署名・捺印する前であれば、申込みは原則としてペナルティなく撤回できます。審査に通っていても、契約が成立していなければ「申込みの撤回」にとどまります。

キャンセルと違約金の詳しい線引きはこちら:賃貸の申し込み後はキャンセルできる?違約金の有無と注意点を解説/賃貸の申し込み後にキャンセルすると違約金はかかる?払ったお金を取り戻す方法と注意点

預り金の返還を拒否するのは違法

撤回するときに問題になりやすいのが、「申込金」「予約金」などの名目で預けたお金です。これについては、宅地建物取引業法が国土交通省令で定める行為を禁止事項として委任しています。

(業務に関する禁止事項)
第四十七条の二 3 宅地建物取引業者等は、前二項に定めるもののほか、宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であつて、(中略)国土交通省令・内閣府令で定めるもの及びその他の宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない。

宅地建物取引業法 第47条の2第3項(e-Gov法令検索)

この委任を受けて、施行規則が具体的な禁止行為を列挙しています。そのひとつが、まさに申込みの撤回と預り金の扱いです。

(法第四十七条の二第三項の国土交通省令・内閣府令及び同項の国土交通省令で定める行為)
第十六条の十一 法第四十七条の二第三項の国土交通省令・内閣府令及び同項の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
二 宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。

宅地建物取引業法施行規則 第16条の11第2号(e-Gov法令検索)

つまり、「もう片方の審査を進めてしまったから」「手続きが進んでいるから」という理由で預り金の返還を拒むのは、施行規則が明確に禁止する行為です。二重申込みを解消する際にこう言われても、応じる必要はありません。

お金の名目性質契約前に撤回した場合
申込金・予約金意思表示の証としての預り金返還される(返還拒否は禁止行為)
仲介手数料契約成立に対する報酬契約が成立していないため発生しない
敷金・礼金契約に付随する金銭契約前なので支払い自体が発生しない
出典:宅地建物取引業法施行規則第16条の11第2号をもとに作成。契約成立後は扱いが変わります
①撤回の意思を 書面・メールで伝える 記録に残すのが重要 ②預り金の返還を 請求する 施行規則16条の11第2号を根拠に ③応じない場合は 行政の窓口へ相談 都道府県の宅建業担当課 口頭だけのやり取りはトラブルの元。やり取りは記録に残しておく

断る連絡は、理由を短く添えるだけで十分

撤回の連絡は、長い説明や謝罪はいりません。「①申込みを撤回したい旨」「②理由(他で契約が決まった等)」「③預り金がある場合はその返還を依頼する旨」の3点が伝われば十分です。

伝える項目文例
①撤回の意思「〇〇(物件名)の申込みを取り下げさせてください」
②理由「別の物件で契約を進めることになりました」
③預り金の返還依頼「お預けしている申込金〇円について、返金の手続きをお願いします」
感情的な説明よりも、事実を短く伝えるほうがお互いスムーズです

不動産会社に迷惑をかけずに進めるための配慮

違法ではないとはいえ、複数の会社・物件に同時進行するときは、相手の手間を意識した進め方をするとトラブルになりにくくなります。

  • 他にも検討中であることを最初に伝える……不動産会社側も、審査や書類準備の優先順位をつけやすくなります
  • 一つに決めたら、すぐに他方へ連絡する……時間が経つほど、相手側の募集停止・審査進行の手間が無駄になります
  • 候補は2〜3件程度に絞る……多すぎると自分の管理も、相手の対応も煩雑になります
  • 内見だけ複数の会社に頼んで、後から連絡を絶つ……案内した会社の労力が無駄になります
  • 審査に通ったことを黙って、ぎりぎりまで返事を引き延ばす……相手は入居者確定として動いているため、トラブルの原因になります

特に、審査を最後まで進めてもらった会社に対しては、断る場合でも「対応してくれたことへの感謝」を一言添えるだけで印象が大きく変わります。賃貸業界は担当者間で情報が共有される範囲が意外と狭くありません。今回は縁がなくても、次の部屋探しで同じ会社にお世話になる可能性もあります。

内見の依頼先を分けることの注意点はこちら:SUUMOで見つけた物件は他の不動産会社でも契約できる?


「審査落ちが心配だから複数申し込みたい」人へ

複数申込みを考える理由の多くは、「審査に落ちたときの保険にしたい」というものです。同時に何件も申し込めば、たしかに1件が落ちても別の候補が残ります。ただし、審査に落ちる理由(年収と家賃のバランス、連帯保証人・保証会社の条件、書類の不備など)は、どの物件・どの会社に申し込んでも共通して評価される部分が多いため、件数を増やすことよりも、審査に通りやすくする準備のほうが根本的な対策になります。

部屋探し全体のスケジュールはこちら:賃貸の部屋探しは何ヶ月前から?ベストな時期と引越しまでの理想のスケジュール/賃貸契約に必要なものとは?手続きの流れや書類チェックリストを紹介!

オンラインで内見や重要事項説明まで完結できれば、複数物件を比較検討する負担そのものも減らせます。オンライン内見からIT重説・契約までの流れもあわせて確認しておくと安心です。


1件に絞るときの判断基準

複数の候補で迷っているときは、感覚だけで決めると後から後悔しがちです。以下の観点で比較すると、判断がしやすくなります。

観点確認すること
初期費用の総額仲介手数料だけでなく、敷金・礼金・保証会社利用料まで含めた合計で比較する
入居希望日との整合性審査から契約、鍵の受け渡しまで、希望の入居日に間に合うスケジュール感か
保証会社の審査条件連帯保証人の有無や、外国籍・自営業など個別の事情に対応できるか
担当者の対応質問への回答が早く、説明が分かりやすいか。契約後の窓口にもなる相手
迷ったら、この4点のうち優先順位が高いものから絞り込むと決めやすくなります

入居希望日が迫っているときの進め方

転勤や進学で引っ越しまでの日程が厳しいと、「複数申し込んでおけば、どれか間に合うだろう」と考えがちです。しかし複数申込みは、あくまで比較検討の手段であって、審査そのものを早める効果はありません。日程が厳しい人ほど、件数を増やすよりも1件ずつの手続きを速く進める準備をしたほうが効果的です。

  • 必要書類を先に揃えておく……本人確認書類や収入証明などを事前にデータ化しておくと、申込みから審査提出までの時間を短縮できます
  • オンライン内見・IT重説に対応した会社を選ぶ……現地に行く時間そのものをなくせます
  • 連帯保証人が用意できない場合は先に伝えておく……保証会社の利用条件を先に確認しておくと、審査段階でのやり直しを防げます

日程の立て方はこちら:賃貸の部屋探しは何ヶ月前から?ベストな時期と引越しまでの理想のスケジュール/賃貸を「内見なし」で契約するのはやばい?失敗しないコツと注意点


よくある質問

賃貸の申し込みは同時に何件までしてよいですか?

件数を制限する法律はありません。宅地建物取引業法とその施行規則を確認しても、申込みの件数の上限を定めた条文は存在しないため、複数件に同時に申し込むこと自体は違法ではありません。ただし審査が同時に進んだ結果、両方に通ってしまい一方を断る必要が生じるなど、実務上の手間は発生します。

複数の不動産会社に同時に申し込むのは違法ですか?

違法ではありません。マナー違反とされることはありますが、それは法律ではなく商慣習の話です。契約書に署名・捺印する前であれば、申込みは原則としてペナルティなく撤回できます。

二重で審査に通ったらどうすればいいですか?

できるだけ早く、契約しないほうの不動産会社へ連絡し、申込みを撤回する意思を伝えてください。時間が経つほど相手側の入居準備が進んでしまい、トラブルの原因になります。連絡は書面やメールなど記録に残る形で行うと安心です。

申込みを撤回すると預り金は返ってきますか?

契約前の撤回であれば返還されます。宅地建物取引業法施行規則第16条の11第2号は、契約の申込みの撤回に際して既に受領した預り金の返還を拒む行為を禁止しています。「手続きを進めてしまったから」という理由も、返還を拒む正当な根拠にはなりません。

内見だけ複数の会社にお願いしてもいいですか?

おすすめしません。法律で禁止されているわけではありませんが、案内した会社に労力だけを負担させることになり、トラブルの原因になります。内見を依頼する会社は最初に決めておくのが基本です。

同じ物件に、複数の不動産会社から申し込むとどうなりますか?

おすすめしません。同じ部屋に対して複数の客付業者から重ねて申込みが入ると、募集を管理している元付業者から見て矛盾する申込みが並ぶことになり、混乱の原因になります。同じ部屋を扱う会社を比較したいときは、申し込む前に条件を確認し、1社に絞ってから申し込んでください。

複数申し込んでいることを不動産会社に伝えるべきですか?

伝える義務はありませんが、伝えておいたほうがトラブルを避けやすくなります。他の物件も検討中であることが分かっていれば、不動産会社側も審査や書類準備の優先順位をつけやすくなり、結果的にお互いの手間が減ります。


まとめ

  • 賃貸の申込みを同時に何件してよいか、件数を制限する法律はない
  • ただし審査には保証会社・オーナーが絡むため、両方通ってしまうと調整の手間が発生する
  • 契約書に署名・捺印する前であれば、原則ペナルティなく撤回できる
  • 撤回時に預り金の返還を拒む行為は、施行規則16条の11第2号で禁止されている
  • 複数検討するときは、他にも検討中であることを伝え、決めたらすぐ連絡するのがトラブルを防ぐコツ
  • 同じ物件に複数の会社から重ねて申し込むのは避け、比較は申し込む前に済ませる

迷ったときは無理に1件に絞る必要はありません。件数そのものより、誰にどこまで進めていて、決めたらどう連絡するかを自分の中で整理しておくことのほうが、結果的にトラブルを防ぎます。とくに預り金がある場合は、返還を渋られても法律上は返してもらえる立場にあることを覚えておいてください。

関連記事:【要注意】賃貸の「先行申込」と「先行契約」の違いは?キャンセル時の違約金リスクと賢い選び方/不動産屋の営業がしつこい・断れないときは?

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出典:宅地建物取引業法 第47条の2(e-Gov法令検索)/宅地建物取引業法施行規則 第16条の11(e-Gov法令検索)
※本記事は2026年8月19日時点の法令にもとづきます。

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