「賃貸の契約者だった夫(親)が亡くなった。この部屋にはもう住めない? 解約するなら何をすればいい?」
結論から書きます。
賃貸の契約者が亡くなっても、賃貸借契約は終了しません。借りる権利(賃借権)は相続人に引き継がれるので(民法896条)、同居していた配偶者や子が相続人なら、そのまま住み続けられます。解約したい場合は、相続人が貸主に解約を申し入れます。敷金は相続財産として相続人に返り、連帯保証人の責任は契約者の死亡時点で打ち止めになります(民法465条の4第1項3号)。
相続による引き継ぎは、民法612条の「賃借権の譲渡」ではありません。貸主の承諾は不要で、法律上は死亡の瞬間に相続人へ移っています。必要なのは「誰が相続人か」を整理して、管理会社に届け出ることです。この記事では、住み続ける側・解約する側・相続放棄を考えている側に分けて、民法と国土交通省「賃貸住宅標準契約書」の条文から手続きを整理します。
この記事でわかること
- 契約者が死亡しても契約が続く根拠と、誰が賃借権を引き継ぐか(民法882条・896条・887条・889条・890条)
- 同居家族が住み続けるときの手続き(相続による承継と名義変更の違い・民法612条)
- 内縁の配偶者など「相続人でない同居人」が住み続けられる条文(借地借家法36条)
- 解約する側の手続き:解約予告・残置物・原状回復・敷金(標準契約書第11条・民法621条・622条の2)
- 相続放棄を考えているときに遺品を処分してはいけない理由(民法915条・921条・939条)
- 連帯保証人・保証会社への影響(民法465条の4・標準契約書第17条)と、相続人がいないときの仕組み(民法951条・残置物モデル契約条項)
契約者が死亡しても賃貸借契約は終わらない|民法896条
相続は死亡によって始まり(民法882条)、相続人は被相続人の財産に属した「一切の権利義務」を引き継ぎます。
(相続の一般的効力)
民法 第896条(e-Gov法令検索)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
賃借権は「一身に専属したもの」ではないので、相続の対象です。権利(住む権利)と義務(家賃を払う義務)がセットで相続人に移ります。だから契約は終わらず、貸主の承諾も要りません。
誰が相続人になるか
相続人の順番は民法で決まっています。配偶者は常に相続人で(890条)、それに加えて、子(887条)、子がいなければ親などの直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹(889条)の順です。
| 亡くなった契約者の家族構成 | 賃借権を引き継ぐ人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 配偶者と子がいる | 配偶者と子の全員(共同相続) | 民法887条・890条・898条 |
| 配偶者のみ(子なし・親あり) | 配偶者と親 | 民法889条1項1号・890条 |
| 独身で子なし・親は他界・兄弟がいる | 兄弟姉妹 | 民法889条1項2号 |
| 婚姻届を出していないパートナーと同居(相続人なし) | そのパートナー(借地借家法36条) | 後述 |
| 相続人が誰もいない・分からない | 相続財産は法人となり、家庭裁判所が清算人を選ぶ | 民法951条・952条 |
住み続ける側の手続き|「相続による承継」は名義変更と違う
同居していた配偶者や子が相続人で、そのまま住み続けるケースがいちばん多いはずです。ここで混同しやすいのが、離婚のときなどに行う「名義変更(賃借権の譲渡)」との違いです。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法 第612条第1項(e-Gov法令検索)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
612条が承諾を求めているのは、賃借人が自分の意思で賃借権を「譲り渡す」場合です。相続は法律の定めによる承継で、譲渡ではありません。だから相続で住み続けることに、貸主の承諾は不要です。貸主が「亡くなった方との契約なので、あらためて新規契約と審査を」と言ってきても、法律上その必要はありません。
| 相続による承継(契約者の死亡) | 名義変更(賃借権の譲渡) | |
|---|---|---|
| 貸主の承諾 | 不要(法律上当然に移る) | 必要(民法612条1項) |
| 契約の同一性 | 同じ契約が続く。契約期間・更新時期もそのまま | 貸主の運用により、同じ契約が続く場合と新規契約になる場合がある |
| 入居審査 | 法律上は不要。管理会社が家賃の支払能力の確認を求めることはある | 譲り受ける人が審査を受ける |
| 敷金 | 相続財産として相続人に引き継がれる(契約が続く間は預けたまま) | 元の賃借人に返還され、新しい賃借人が改めて預ける(民法622条の2第1項2号) |
| 連帯保証人 | 死亡時点で元本が確定。その後の家賃は保証の範囲外(民法465条の4第1項3号) | 譲り受ける人が新たに保証人を立てるか保証会社に加入 |
実際にやること
- 管理会社(貸主)に連絡する。「契約者が亡くなった」「相続人の◯◯が住み続ける」の2点を伝える。多くの管理会社は「賃借人変更届」「相続承継届」といった書面を用意している
- 相続関係が分かる書類を用意する。戸籍謄本(除籍謄本)など、相続人であることを示せる書類。管理会社が求める範囲でよい
- 家賃の引き落とし口座を変える。契約者名義の口座は、金融機関が死亡を把握した時点で凍結されるので、引き落としが止まる前に手続きする
- 連帯保証人・保証会社の扱いを確認する。死亡で保証人の元本は確定するため、管理会社から新しい保証人か保証会社の加入を求められることが多い(後述)
- 他の相続人と合意しておく。共同相続なら、誰が住んで誰が家賃を負担するかを相続人の間で決め、書面に残す
相続人でない同居人(内縁の配偶者など)は住み続けられるか|借地借家法36条
婚姻届を出していないパートナーは相続人ではありません。契約者が亡くなると、法律上は賃借権が他の相続人(契約者の親や兄弟)に移り、同居していた本人は宙に浮いてしまいます。借地借家法は、この場面のために条文を置いています。
(居住用建物の賃貸借の承継)
借地借家法 第36条(e-Gov法令検索)
第三十六条 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。
ポイントは3つです。
- 「相続人なしに死亡した場合」の条文。契約者に相続人が一人もいないときに、内縁の配偶者や事実上の養子が、住む権利と家賃を払う義務をそのまま引き継ぐ
- 引き継ぎたくなければ1か月以内に反対の意思表示。黙っていれば承継する(滞納家賃などの債務も一緒に引き継ぐ点に注意)
- 相続人がいる場合はこの条文の対象外。賃借権は相続人に移るので、住み続けるには、相続人と貸主の両方に事情を説明し、相続人の了解のもとで居住を続けるか、貸主の承諾を得て自分が新しい契約者になる(名義変更・民法612条)形を取る
解約する側の手続き|相続人が解約を申し入れる
一人暮らしの親が亡くなった、といったケースでは、部屋を引き払うことになります。契約は相続人に引き継がれているので、解約の申入れをするのも相続人です。
(乙からの解約)
国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)第11条
第11条 乙は、甲に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から30日分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む。)を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。
解約の申入れをするまで、家賃は発生し続けます。「亡くなった日」で家賃が止まるわけではないので、方針が決まったら早めに申入れを出すことが、いちばんの節約になります。実際の契約書で「1か月前」「2か月前」となっている場合は、契約書の特約が優先します。
相続人が複数いる場合、民法252条1項は共有物の管理に関する事項を「持分の価格に従い、その過半数で決する」としていますが、管理会社は相続人全員の署名を求めるのが通常です。相続人の間で先に方針を揃えてから連絡すると、手続きが一度で済みます。
残置物・原状回復・敷金
解約するなら、部屋を空にして返す必要があります。原状回復の範囲は民法621条のとおりで、通常の使用による損耗や経年変化は借主の負担ではありません。敷金は、滞納家賃や原状回復費用など「賃貸借に基づいて生じた債務」を差し引いた残額が返されます(民法622条の2第1項1号)。返還先は相続人です。
| 項目 | 誰が・どうする | 根拠 |
|---|---|---|
| 解約の申入れ | 相続人が、30日以上前に(契約書の特約があればそれに従う) | 標準契約書第11条 |
| 亡くなった日から解約日までの家賃 | 相続人が負担(相続財産から支払える) | 民法896条 |
| 家財・遺品の搬出 | 相続人が行う。相続放棄を検討中なら先に専門家へ(次章) | 民法921条 |
| 原状回復 | 通常損耗・経年変化は不要。それ以外の損傷は相続人が負担 | 民法621条 |
| 敷金の精算 | 債務を差し引いた残額が相続人に返還される | 民法622条の2第1項1号 |
相続放棄を考えているなら、遺品を処分する前に止まる|民法921条
亡くなった契約者に借金や多額の家賃滞納があり、相続放棄を考えている場合は、ここがいちばん重要です。相続放棄は、相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申述します(民法915条・938条)。放棄すると、初めから相続人でなかったことになります(939条)。
ところが、その前に遺品を「処分」してしまうと、相続を承認したとみなされることがあります。
(法定単純承認)
民法 第921条(e-Gov法令検索)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。(後略)
管理会社から「早く部屋を空けてほしい」と言われても、相続放棄を考えているなら、家財を売る・捨てる・持ち帰るといった行為を先にしないでください。「処分」にあたると、放棄できなくなるおそれがあります。何が処分にあたるかは事案ごとに判断が分かれるので、弁護士や司法書士に相談してから動くのが安全です。相続放棄をした後も、その財産を現に占有している間は、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務があります(民法940条1項)。
| 行為 | 相続放棄への影響 | 根拠 |
|---|---|---|
| 3か月以内に家庭裁判所へ放棄を申述する | 初めから相続人でなかったことになる | 民法915条・938条・939条 |
| 3か月を過ぎても何もしない | 単純承認とみなされる | 民法921条2号 |
| 遺品を売る・捨てる・持ち帰る | 「処分」として単純承認とみなされるおそれ | 民法921条1号 |
| 放棄後に遺品を隠す・消費する | 単純承認とみなされる | 民法921条3号 |
| 放棄後、引き渡すまで保管する | 自己の財産と同一の注意で保存する義務 | 民法940条1項 |
連帯保証人と保証会社はどうなる|死亡で保証の元本は確定する
契約者の親などが連帯保証人になっていた場合、その責任は契約者の死亡時点で打ち止めになります。個人が保証人になる賃貸借の保証は「個人根保証契約」で、民法465条の4が元本の確定事由を定めています。
(個人根保証契約の元本の確定事由)
民法 第465条の4 第1項第3号(e-Gov法令検索)
第四百六十五条の四 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。(中略)
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
国土交通省の賃貸住宅標準契約書(連帯保証人型)第17条3項も「丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときに、確定するものとする」と定めています。同契約書の解説は、この意味をこう書いています。
主たる債務者が死亡したときに元本が確定するということは、基本的な考え方としては、保証人は、借主の死亡時までに生じている債務についてのみ(極度額を限度として)責任を負い、死亡後に生じた債務については責任を負わないということになり、例えば借主死亡後の賃料については、保証人の責任範囲(元本)に含まれないと考えられる。ただし、具体的な保証人の責任範囲は事案や解釈により異なり得るため、平成29年民法改正後の裁判例の蓄積が待たれる。
国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版・連帯保証人型)作成にあたっての注意点・第17条第3項の解説
この結果、住み続ける相続人に対して、管理会社は新しい連帯保証人を立てるか、保証会社に加入することを求めるのが通常です。標準契約書の解説も「連帯保証人の死亡や破産等があった場合には、借主は新たな連帯保証人に保証を委託するといった特約を結ぶことも考えられる」としています。
保証会社を利用していた場合は、保証委託契約の当事者は亡くなった契約者です。相続人が引き継げるか、あらためて申込みが必要かは、保証会社ごとの契約条件で決まります。管理会社と同時に、保証会社にも死亡の事実を連絡してください。
相続人がいない・分からないとき|相続財産清算人と「残置物モデル契約条項」
相続人がいるかどうか分からない場合、相続財産は法人となり(民法951条)、家庭裁判所が利害関係人の請求で相続財産清算人を選任します(952条1項)。貸主は利害関係人として請求でき、清算人が契約の解約や残置物の処理を行います。清算人が選ばれると、相続人がいれば権利を主張するよう6か月以上の期間を定めて公告されます(952条2項)。
この手続きに時間と費用がかかることが、単身の高齢者が部屋を借りにくい一因になっていました。そこで国土交通省と法務省は2021年(令和3年)6月、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しています。単身高齢者(60歳以上の人)の入居時に、賃借人が受任者(推定相続人や居住支援法人など)との間で、①死亡後に賃貸借契約を解除する代理権を与える「解除関係事務委任契約」と、②残された家財を廃棄・送付する「残置物関係事務委託契約」を結んでおく仕組みです。標準契約書の特約項目の例にも「借主の死亡時における本賃貸借契約の解除や居室内の残置物処理を内容とする死後事務委任契約を締結する場合、これに関連する条項」が挙げられています。
なお、部屋で亡くなった場合の次の入居者への告知については、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年10月8日)が、対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよいとしています。病気や老衰で亡くなったことを理由に、残された家族が特別な費用を負う仕組みにはなっていません。
残された家族が新しい部屋を探すとき
今の部屋が広すぎる、家賃が一人では重い、思い出がつらい。そうした理由で住み替える人も多くいます。入居審査は「これから自分の収入で家賃を払えるか」で判断されるので、遺族年金や自分の収入を前提に、無理のない家賃で探すことが大切です。
- 今の部屋の解約予告と新居の契約日を揃える。二重家賃を避けるため、解約予告を出す前に新居の目処を付ける
- 初期費用を抑える。葬儀や手続きで出費が重なる時期なので、仲介手数料や礼金の有無で総額が変わる物件の選び方が効く
- 店舗に行く時間がないなら非対面で進める。オンライン内見からIT重説まで、来店なしで契約まで進められる
- 住民票の異動も忘れずに。転入した日から14日以内に転入届(住民基本台帳法22条)
よくある質問
賃貸の契約者が死亡したら、同居している家族はそのまま住み続けられますか?
住み続けられます。賃借権は民法896条により相続人に承継されるので、同居している配偶者や子が相続人であれば、契約はそのまま続きます。相続による承継は民法612条の賃借権の譲渡ではないため、貸主の承諾や新規の入居審査は法律上不要です。管理会社に契約者の死亡と住み続ける相続人を届け出て、家賃の引き落とし口座を変更してください。連帯保証人の責任は死亡時点で元本が確定するため、新しい保証人か保証会社の加入を求められることが多いです。
契約者が亡くなった賃貸を解約したい場合、誰がいつまでに手続きしますか?
相続人が解約を申し入れます。国土交通省の賃貸住宅標準契約書第11条は少なくとも30日前の解約申入れを定めており、実際の契約書で1か月前や2か月前とされていればその特約が優先します。家賃は亡くなった日ではなく解約日まで発生するので、方針が決まり次第、早めに申入れを出すことが節約になります。相続人が複数いる場合は、管理会社が相続人全員の署名を求めるのが通常なので、先に相続人の間で方針を揃えてから連絡してください。敷金は債務を差し引いた残額が相続人に返還されます。
相続放棄をするつもりですが、部屋の遺品を片付けても大丈夫ですか?
片付ける前に専門家へ相談してください。民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めており、遺品を売る・捨てる・持ち帰るといった行為が処分にあたると、相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄は相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申述し(民法915条・938条)、放棄すると初めから相続人でなかったことになります(939条)。放棄した後も、現に占有している財産は相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務があります(940条1項)。
連帯保証人は、契約者の死亡後の家賃も払わなければいけませんか?
原則として死亡後の家賃は保証の範囲外です。民法465条の4第1項3号は、主たる債務者が死亡したときに個人根保証契約の元本が確定すると定めています。国土交通省の賃貸住宅標準契約書第17条3項も同じ内容で、その解説は、保証人は借主の死亡時までに生じている債務についてのみ極度額を限度として責任を負い、借主死亡後の賃料は保証人の責任範囲に含まれないと考えられるとしています。死亡までに発生していた滞納家賃や原状回復費用は、極度額を上限に保証人が責任を負います。
婚姻届を出していないパートナーが亡くなりました。契約者ではない私は住み続けられますか?
亡くなった方に相続人がいない場合は、借地借家法36条により住み続けられます。同条は、居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、婚姻や縁組の届出をしていないが事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者が、賃借人の権利義務を承継すると定めています。引き継ぎたくない場合は、相続人なしに死亡したことを知ってから1か月以内に貸主へ反対の意思を表示します。相続人がいる場合は賃借権が相続人に移るため、相続人の了解のもとで居住を続けるか、貸主の承諾を得て自分が契約者になる名義変更の手続きが必要です。
まとめ
- 契約者が死亡しても賃貸借契約は終わらない。賃借権は相続人に承継される(民法896条)
- 相続による承継は譲渡ではないので、貸主の承諾は不要(民法612条は適用されない)。管理会社への届出と口座変更をする
- 相続人がいない場合、内縁の配偶者など事実上の同居者が承継できる(借地借家法36条)。反対するなら1か月以内
- 解約するなら相続人が30日以上前に申入れ(標準契約書第11条)。家賃は解約日まで発生する
- 敷金は債務を差し引いた残額が相続人に返還される(民法622条の2)
- 相続放棄を考えているなら遺品を処分しない(民法921条1号)。3か月以内に家庭裁判所へ(915条)
- 連帯保証人の責任は死亡時点で元本確定(民法465条の4第1項3号)。死亡後の家賃は保証の範囲外
- 相続人不明なら相続財産清算人(民法952条)。高齢の親には「残置物モデル契約条項」(国交省・法務省2021年6月)で備えられる
身近な人を亡くした直後に、賃貸の手続きまで考えるのは負担です。
ただ、法律の整理はシンプルで、「契約は相続人に引き継がれている」「住むか解約するかを相続人が決める」「放棄するなら遺品に手を付けない」の3点を押さえれば、大きな失敗は避けられます。
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