「自己破産したら、今の部屋を出ていかないといけない? 次の部屋は借りられる?」
結論から書きます。
自己破産しても、今住んでいる賃貸借契約は自動では終わりません。家賃を払い続けている限り、「破産した」という理由だけで貸主が契約を解除できる法律上の根拠は、現在の民法にはありません。滞納していた家賃は破産債権として免責の対象になり、支払い義務を免れます。一方で新しく部屋を借りるときは、保証会社が信販系か独立系かで、破産の情報が審査に届くかどうかが変わります。
かつての民法には「賃借人が破産したら貸主は解約を申し入れられる」という条文(旧621条)がありました。この条文は2004年の破産法制定に合わせて削除され、現在の民法621条は「賃借人の原状回復義務」に置き換わっています。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」の解除事由(第10条)にも、破産は含まれていません。
この記事では、「今の家」と「次の家」に分けて、自己破産と賃貸の関係を破産法・民法の条文から整理します。当事者の方が、手続きの先に部屋探しの選択肢が残っていることを確かめられる構成にしました。
この記事でわかること
- 自己破産しても今の賃貸に住み続けられる根拠(旧民法621条の削除・破産法53条・標準契約書第10条)
- 滞納家賃はどうなるか(破産法2条5項・100条・253条)と、申立て前に滞納分だけ払ってはいけない理由(破産法162条)
- 敷金・家財・現金はどこまで手元に残るか(破産法34条・民事執行法131条)
- 連帯保証人(親など)に何が起きるか(破産法253条2項・民法465条の4)
- 破産手続中に引っ越せるか(破産法37条・216条)
- 新しく借りるときの保証会社審査:信販系と独立系の違い、信用情報の登録期間、LICCデータベース終了(2026年3月)
今の家は原則そのまま|「破産=解約」の条文は2004年に削除された
まず、いちばん不安が大きいところから確認します。
現在の民法で、賃貸借に関する621条はこうなっています。
(賃借人の原状回復義務)
民法 第621条(e-Gov法令検索)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
破産の話が出てきません。ここには2004年(平成16年)まで、「賃借人が破産宣告を受けたときは、期間の定めがあっても、貸主または破産管財人は解約の申入れができる」という旧621条がありました。現行の破産法(平成16年法律第75号)の制定に伴う整備法で、この条文は削除されています。
削除の理由は、貸主の保護は「破産後に家賃が払われなければ債務不履行で解除できる」ことで足りる、という整理です。公益社団法人全日本不動産協会の法律相談も、「新法施行後は、賃借人が賃料を支払っている限りは、賃借人に破産手続きが開始したということ自体を理由としての賃貸借契約の解約申入れはできない」と説明しています。
破産法53条は「管財人の権利」であって、貸主の権利ではない
破産した人の契約については、破産法53条に「双務契約」のルールがあります。
(双務契約)
破産法 第53条第1項(e-Gov法令検索)
第五十三条 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
賃貸借も双務契約なので、この条文の対象です。ただし読み方に注意してください。解除するか続けるかを選べるのは「破産管財人」であって、貸主ではありません。貸主側から「あなたは破産したから出ていって」と言える根拠は、この条文にもありません。
そして、住んでいる部屋の賃貸借を管財人がわざわざ解除する実益は通常ありません(解除しても財団に入る財産が増えるわけではなく、破産者の生活基盤を壊すだけです)。さらに、財産が少なく破産手続の費用をまかなえない場合は、開始決定と同時に手続が終わる「同時廃止」になり、そもそも管財人が選ばれません。
(破産手続開始の決定と同時にする破産手続廃止の決定)
破産法 第216条第1項(e-Gov法令検索)
第二百十六条 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
標準契約書の解除事由にも「破産」はない
国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)の第10条は、貸主が契約を解除できる場合を列挙しています。催告して直らなければ解除できるのは、賃料・共益費の不払いや修繕費の未払い(第1項)、使用目的違反や禁止行為(第2項)。無催告で解除できるのは反社会的勢力に関する事項(第3項・第4項)です。「賃借人が破産したとき」は、どこにも書かれていません。
契約書の特約に「破産の申立てがあったときは解除できる」と書かれていることがあります。法律上の解除事由ではなく、旧621条を削除した趣旨とも合わない条項なので、家賃を払い続けているなら、この特約だけを根拠に退去を求められても応じる前に弁護士(破産を依頼している場合はその弁護士)に確認してください。
滞納している家賃はどうなる|破産債権として免責される
すでに家賃を滞納している場合、その滞納分は「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」なので、破産債権です。
第二条 (中略)
破産法 第2条第5項(e-Gov法令検索)
5 この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。
破産債権は、破産手続の中でしか行使できません(破産法100条1項)。つまり貸主は、手続が始まったあと「滞納分を今すぐ払え」と個別に取り立てることができなくなります。そして免責許可の決定が確定すると、破産者は破産債権について責任を免れます。
(免責許可の決定の効力等)
破産法 第253条第1項(e-Gov法令検索)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
(中略)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条及び第七百六十六条の三(中略)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
| お金の種類 | 免責されるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 破産手続開始前の滞納家賃・共益費 | 免責される | 破産法2条5項・253条1項本文 |
| 破産手続開始後の家賃 | 免責されない(払い続ける) | 開始後の原因なので破産債権にならない |
| 住民税・固定資産税などの税金 | 免責されない | 253条1項1号 |
| 養育費・婚姻費用 | 免責されない | 253条1項4号 |
| 債権者名簿にわざと載せなかった債権 | 免責されない | 253条1項6号 |
「滞納家賃だけ先に払っておく」は危険|偏頗弁済(破産法162条)
ここで、住み続けたい人がやってしまいがちな失敗があります。破産を申し立てる直前に、貸主にだけ滞納家賃をまとめて払うことです。気持ちは分かりますが、破産法はこれを「特定の債権者への偏った弁済」として、あとから取り消せる(否認できる)行為にしています。
(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
破産法 第162条第1項(e-Gov法令検索)
第百六十二条 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
否認されると、貸主は受け取った家賃を財団に返さなければならず、結果として滞納は消えないまま、貸主との関係だけが悪くなります。また、特定の債権者に特別の利益を与える目的での弁済は、免責不許可事由にもなりえます(破産法252条1項3号)。滞納がある状態で破産と住み続けることを両立させたいなら、自分で払わずに、申立てを依頼する弁護士に「この部屋に住み続けたい」と最初に伝えてください。貸主との調整方法を含めて、手続の中で整理できます。
敷金・家財・現金はどこまで残る|自由財産(破産法34条)
「破産すると家財を全部持っていかれる」というイメージがありますが、破産法は生活に必要な財産を破産財団から外しています。
(破産財団の範囲)
破産法 第34条第3項(e-Gov法令検索)
第三十四条 (中略)
3 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)(後略)
1号の金額を計算します。民事執行法131条3号の「政令で定める額」は、民事執行法施行令1条で66万円と定められています。その2分の3なので、99万円までの現金は破産財団に入りません。2号の「差し押さえることができない財産」は民事執行法131条に列挙されていて、「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」(1号)や「一月間の生活に必要な食料及び燃料」(2号)が含まれます。
敷金については少し注意が要ります。敷金の返還請求権は「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」として破産財団に属します(破産法34条2項)。ただし敷金が返ってくるのは賃貸借が終了して部屋を返したとき(民法622条の2第1項1号)なので、住み続けている限り、返還そのものが発生しません。退去して敷金が返る場面になると財団の扱いになる、と理解しておけば十分です。
連帯保証人はどうなる|免責は保証人に及ばない(破産法253条2項)
親などに連帯保証人になってもらっている場合、ここは正直に把握しておくべき点です。免責されても、それは「破産者本人」の責任が消えるだけで、保証人の責任は残ります。
第二百五十三条 (中略)
破産法 第253条第2項(e-Gov法令検索)
2 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
もう一つ、賃貸の保証に特有の話があります。個人が連帯保証人になる賃貸借の保証は「個人根保証契約」で、保証人の責任がそこで打ち止めになる事由(元本確定事由)が民法465条の4に定められています。この1項には「保証人が破産手続開始の決定を受けたとき」はありますが、「主たる債務者(借主)が破産したとき」は1項にありません。借主の破産で元本が確定するのは、2項の「個人貸金等根保証契約」、つまり貸金の保証に限られます。
(個人根保証契約の元本の確定事由)
民法 第465条の4(e-Gov法令検索)
第四百六十五条の四 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。(中略)
一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
2 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。(中略)
二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
| 場面 | 連帯保証人の責任 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借主が破産前に滞納した家賃 | 請求される(借主が免責されても) | 破産法253条2項 |
| 借主の破産後の家賃(住み続ける場合) | 保証は続く。借主が払っていれば請求は来ない | 民法465条の4第1項に借主の破産は含まれない |
| 保証人が負う上限 | 契約書の「極度額」まで | 民法465条の2 |
| 保証人自身が破産したとき | その時点で元本が確定する | 民法465条の4第1項2号 |
破産手続中に引っ越せる?|管財事件は裁判所の許可(破産法37条)
「今の家賃が高すぎて、安い部屋に移りたい」という人も多いはずです。破産手続中の引っ越しには、次の条文が関わります。
(破産者の居住に係る制限)
破産法 第37条第1項(e-Gov法令検索)
第三十七条 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
これは管財人が財産を調べる間、破産者と連絡が取れなくなるのを防ぐための条文です。引っ越しを禁止しているのではなく、「許可を得れば引っ越せる」という規定です。同時廃止(破産法216条)の場合は、開始決定と同時に破産手続が終わるので、この制限はかかりません。
| 手続の種類 | 引っ越し | ポイント |
|---|---|---|
| 同時廃止(財団が費用に足りない場合・216条) | 制限なし | 手続は開始と同時に終了。免責の判断だけが残る |
| 管財事件(管財人が選ばれる場合) | 裁判所の許可が必要(37条) | 申立てをすれば通常の転居は認められる。まず依頼している弁護士に相談 |
| 申立て前の引っ越し | 法律上の制限はない | ただし高額な引っ越し費用や敷金・礼金の支出は、財産の流出として説明を求められることがある |
新しく借りるとき|保証会社が「信販系」か「独立系」かで審査が変わる
ここからが「次の家」の話です。自己破産の事実そのものは、貸主や管理会社に伝える義務がありません。審査で問題になるのは、保証会社が破産の情報にアクセスできるかどうかです。
信販系保証会社はCICの情報を見られる
クレジットカード会社や信販会社が家賃保証を行う「信販系」の保証会社は、指定信用情報機関CICの会員です。CICが公表している加盟資格は、「貸金業者として登録を受けていること」「包括信用購入あっせん業者、登録少額包括信用購入あっせん業者または個別信用購入あっせん業者として登録を受けていること」(割賦販売法)、またはCICが定める資格要件(「消費者信用取引を業務としていること」など)を満たすことです。
そしてCICのクレジット情報には「異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日」が含まれ、保有期間は「契約期間中および契約終了後5年以内」です。
独立系保証会社はCICの会員になれない。共有データベースも2026年3月で終了
家賃保証だけを行う「独立系」の保証会社は、貸金業や割賦販売の登録業者ではないので、上のCICの加盟資格を満たしません。つまり独立系の保証会社は、信用情報機関の破産の記録を照会できる立場にありません。
これまで独立系の業界団体である一般社団法人全国賃貸保証業協会(LICC)が、会員各社の「代位弁済情報(家賃情報)」を共有するデータベースを運用していました。ここに載ると、破産とは別に「過去に家賃保証会社が立て替えた」記録が他社にも見えていたわけです。このデータベースは、同協会の公表によれば「2026年3月末日を以て運用を終了」し、「当協会が保有する全ての情報は破棄」されました(2026年4月1日付お知らせ)。2010年から続いた仕組みが終わったので、2026年4月以降は、独立系保証会社の間で過去の立替え情報を照会し合う共通の仕組みはありません(各社が自社で持つ過去の取引記録は別です)。
信用情報に破産が残る期間
信用情報機関は3つあり、それぞれ公表している登録期間が違います。
| 信用情報機関 | 主な会員 | 破産に関わる情報の登録期間(各機関の公表値) |
|---|---|---|
| CIC | クレジット会社・信販会社 | クレジット情報(異動の有無を含む):契約期間中および契約終了後5年以内 |
| JICC | 消費者金融・クレジット会社など | 取引事実に関する情報:契約継続中及び契約終了後5年以内 |
| 全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行・信用金庫など | 官報情報(破産・民事再生手続開始決定):当該決定日から7年を超えない期間 |
つまり信販系の審査で破産の記録が見える期間は、長くて7年です。その期間中でも、独立系保証会社の物件なら信用情報は審査に使われません。不動産会社や管理会社に「保証会社はどこですか」と聞けば教えてもらえるので、物件を選ぶ段階で確認してください。
審査を通しやすくする、現実的な選択肢
- 保証会社が独立系の物件を選ぶ。申込み前に不動産会社へ「保証会社はどこか」を確認する。信販系(カード会社・信販会社の名前が付いた保証会社)なら、記録が残っている期間は別の物件を検討する
- 家賃は今の収入で無理なく払える額にする。審査で見られるのは「これから払えるか」です。破産で借金が整理されたあとは、家賃を払える余力はむしろ増えています
- 申込書は正確に書く。破産の事実を申告する欄は通常ありませんが、収入や勤務先を偽ると、それ自体が審査落ちの理由になります
- 初期費用を抑える。手元に残せる現金は限られるので、仲介手数料や礼金の有無で総額が変わる物件の選び方が効きます
- 店舗に行かずに進める。手続きで時間が取られる時期は、オンライン内見とIT重説で来店なしに契約まで進める方法があります
離婚や同棲解消と重なるとき
自己破産は、離婚や同棲の解消と同じ時期に起きることが少なくありません。契約の名義が自分でない場合や、連名契約の場合は、破産とは別に「誰が契約者として残るか」の整理が要ります。破産法253条1項4号のとおり、養育費や婚姻費用は免責されないので、家賃と合わせた毎月の支出を先に計算しておくと、部屋の予算が決めやすくなります。
よくある質問
自己破産すると、今の賃貸から追い出されますか?
家賃を払い続けている限り、破産だけを理由に契約を解除される法律上の根拠はありません。賃借人の破産を解約事由としていた旧民法621条は、2004年の破産法制定に伴って削除され、現在の民法621条は賃借人の原状回復義務の条文になっています。破産法53条の解除の選択権は破産管財人のもので、貸主にはありません。国土交通省の賃貸住宅標準契約書第10条の解除事由にも、破産は含まれていません。破産後の家賃を払えなくなった場合は、通常の不払いとして解除の対象になります。
滞納している家賃は自己破産で免責されますか?
免責されます。破産手続開始前に発生した滞納家賃は、破産法2条5項の「破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」として破産債権になり、免責許可の決定が確定すれば、破産法253条1項により支払い義務を免れます。ただし、破産手続開始後の家賃は破産債権ではないので払い続ける必要があります。また、免責は保証人に及ばないため(253条2項)、連帯保証人には滞納分の請求が残ります。申立て前に貸主にだけ滞納分を払うと、破産法162条の偏頗弁済として否認される可能性があるので、先に弁護士へ相談してください。
自己破産すると、家具や敷金は取られますか?
生活に必要な家財は破産財団に入りません。破産法34条3項は、民事執行法131条の差押禁止財産(生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具、1か月分の食料と燃料など)と、民事執行法施行令1条の66万円に2分の3を乗じた99万円までの現金を、破産財団から除いています。敷金の返還請求権は将来の請求権として財団に属しますが、敷金が返還されるのは賃貸借が終了して部屋を返したときなので、住み続けている限り返還は発生しません。
自己破産後に新しい部屋は借りられますか?保証会社の審査はどうなりますか?
借りられます。破産の事実を貸主に申告する義務はなく、審査で問題になるのは保証会社が破産の情報にアクセスできるかどうかです。クレジット会社や信販会社が運営する信販系の保証会社は指定信用情報機関CICの会員で、CICのクレジット情報には異動(延滞・保証履行・破産)の有無が含まれ、契約終了後5年以内保有されます。全国銀行個人信用情報センターの官報情報は決定日から7年を超えない期間です。一方、家賃保証を専業とする独立系の保証会社は、貸金業法や割賦販売法の登録業者ではないためCICの加盟資格を満たさず、信用情報を照会できません。独立系保証会社の物件を選べば、信用情報は審査に使われません。
家賃保証会社の間で滞納情報は共有されていますか?
2026年4月以降、独立系保証会社の間で共有する共通のデータベースはありません。一般社団法人全国賃貸保証業協会(LICC)が2010年から運用してきた「代位弁済情報(家賃情報)データベース」は、同協会の2026年4月1日付のお知らせによると、2026年3月末日をもって運用を終了し、協会が保有する全ての情報は破棄されました。これに伴い個人情報開示手続も終了しています。ただし、各保証会社が自社で保有する過去の取引記録は別なので、以前に立替えを受けた保証会社と同じ会社の審査では、その記録が参照される可能性があります。
まとめ
- 自己破産しても、今の賃貸借契約は自動では終わらない。破産を解約事由とする旧民法621条は2004年に削除済み
- 破産法53条の解除権は管財人のもので貸主にはない。同時廃止(216条)なら管財人自体が選ばれない
- 標準契約書第10条の解除事由に破産はない。家賃を払い続けていれば住み続けられる
- 滞納家賃は破産債権として免責される(253条1項)。ただし保証人への請求は残る(253条2項)
- 申立て前に貸主にだけ滞納分を払うと偏頗弁済(162条)。先に弁護士へ「住み続けたい」と伝える
- 現金99万円までと生活必需の家財は手元に残る(34条3項・民事執行法131条・施行令1条)
- 新しく借りるなら保証会社が独立系の物件を選ぶ。信販系はCICで破産の記録(契約終了後5年以内)を見られる
- LICCの代位弁済情報データベースは2026年3月末で終了・全情報破棄。独立系の間で共有する仕組みは無くなった
自己破産は、借金を法律の手続きで整理して、生活を立て直すための制度です。
住まいについては「今の家は家賃を払えば続く」「次の家は保証会社の選び方で道がある」という2点を押さえておけば、手続きの先に部屋探しの選択肢はきちんと残ります。
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